第3章 発掘調査の概要
第9節 51・52 号墓
(1)遺構(第26図)
調査区北側の丘陵西側の斜面地で、前に述べた 48 号墓の南側に隣接する遺構である。48 号墓 と同様丘陵斜面の低位に位置しており、ニービの地山を掘り込んで構築された遺構である。51 号 墓・52 号墓の入口は互いに隣接し、51 号墓が北側・52 号墓が南側に検出された。
51号墓の入口は幅0.63m・高さ1.0mで、方位を南西(N140°W)に向ける。入口を入る と奥に向けて約 7.5 m掘り進められており、戦時中に壕として転用された様子が窺われる。奥へ 進むと天井が高くなり掘り込まれた空間が広がることから、内部に墓遺構としての形状を窺うこ とは難しい。入口からは蔵骨器片が多量に散乱しており、壕として使用の際に投棄されたもので はないかと推測される。一方で、遺構奥の空間の床面上からは陶磁器類が碗を中心として多量に 出土した。近代以降の砥部産や美濃産などが主体を占めることから、壕への避難に伴い持ち込ま れたものであると考えられる。
52号 墓 の 入 口 は51号 墓 の 南 側 に 隣 接 し、 幅0.6m・ 高 さ0.8m で 方 位 を 南 西( N124 ° W ) に向ける。入口を入ると約 1.8 m直線的に掘り込まれたのち北側に曲がり、51 号墓と連結する。
51 号墓と同様、壕として転用されたものであるとみられる。
(2)遺物(第 27 ~ 30 図、第 20 ~ 23表)
51・52号 墓 か ら 出 土 し た 遺 物 の 種 類 及 び 数 量 に つ い て は 第7表 に 記 載 し た。 遺 物 の 傾 向 と し
ては大きく二つに分かれ、壕として転用された際に投棄された蔵骨器の破片群と、壕に伴う生活 雑器等の陶磁器類である。蔵骨器片の接合を試みたところ、マンガン釉甕形の身が3点・蓋4点 と家形の身と蓋各1点が完形ないし実測図化に耐えうる程度まで復元できたことから、実測のう え図示した。このほか、転用品とみられる壺1点を示した。陶磁器類は完形で残存するものが多 量に出土しており、その中から文様等特徴的なものを抽出して図示した。なお、蔵骨器・陶磁器 類ともに観察所見の詳細については観察表にまとめて記載した。第27 図1はマンガン釉甕形蔵 骨器の身である。横帯および線彫りによる肩部の葉文・体部の蓮華文と屋門で構成される文様が、
各所で擦り消されている様子が見てとれる。中でも横帯5の屋門下方地点に正方形に擦り消され た痕跡を認めることができる。文様施文後に何らかの工具に当たって意図せずに擦れたものでは ないかと思われる。
第30図3(図版28-6)は金属製の指輪である。内面は全体が青錆で覆われ、外面は半分程度 が青錆、残りは地金が露出する。正面に花文が配されるが、錆と剥離で不明瞭である。幅は花文 の位置で最も狭く、その背面で最も太くなる。直径 2.0 ㎝、幅 0.7 ~ 0.8 ㎝、厚さ 1.1 ~ 1.3 ㎜。
A
EL=99.500m
EL=98.500m
EL=99.500m
EL=98.500m
AA’
A’
B
B’
B
B’
C
C’ C’
第26図 51・52号墓 遺構図
0 2m
S=1/80 X=26706.000
Y=23195.000
X=26702.000 Y=23195.000
X=26704.000 Y=23189.000
52号墓 51号墓
EL=98.500m EL=99.500m
EL=98.500m EL=99.500m
C
C
D
D’
D D’
(3)銘書
接合したマンガン釉甕形蔵骨器蓋4点から銘書が書かれていることを確認できたが、掠れて消 えかけており正確に読み取れない部分も多い。第 27 図 6 では文字の崩れも大きく、平仮名や長 音も用いられるなど、定型的ではない書かれ方が見てとれる。
第 27 図 51 号墓 出土遺物(1)
S=1/6
前原・西前田原 委託 No.11
H25 前原 51 号墓 南第一地区区画整理埋蔵文化財発掘調査事業に伴う遺物実測等業務委託
S=1/6
前原・西前田原 委託 No.10
H25 前原 51 号墓 南第一地区区画整理埋蔵文化財発掘調査事業に伴う遺物実測等業務委託
S=1/6
前原・西前田原 委託 No.18
H25 前原 51 号墓 南第一地区区画整理埋蔵文化財発掘調査事業に伴う遺物実測等業務委託
S=1/6
前原・西前田原 委託 No.16
H25 前原 51 号墓 南第一地区区画整理埋蔵文化財発掘調査事業に伴う遺物実測等業務委託
S=1/6
前原・西前田原 委託 No.15
H25 前原 51 号墓 南第一地区区画整理埋蔵文化財発掘調査事業に伴う遺物実測等業務委託
前原・西前田原 委託 No.19
H25 前原 51 号墓 南第一地区区画整理埋蔵文化財発掘調査事業に伴う遺物実測等業務委託
前原・西前田原 委託 No.17
H25 前原 51 号墓 南第一地区区画整理埋蔵文化財発掘調査事業に伴う遺物実測等業務委託
S=1/6
前原・西前田原 委託 No.12
H25 前原 51 号墓 南第一地区区画整理埋蔵文化財発掘調査事業に伴う遺物実測等業務委託
0 S=1/6 30cm
前原・西前田原 委託 No.10
H25 前原 51 号墓 南第一地区区画整理埋蔵文化財発掘調査事業に伴う遺物実測等業務委託
1
3
6 7
8 4
5 2
− 50 −
S=1/6
前原・西前田原 委託 No.13・No.14 H25 前原 51 号墓 南第一地区区画整理埋蔵文化財発掘調査事業に伴う遺物実測等業務委託
0 S=1/6 30cm
前原・西前田原 委託 No.10
H25 前原 51 号墓 南第一地区区画整理埋蔵文化財発掘調査事業に伴う遺物実測等業務委託
1
3 4
2
S=1/2 5cm 0
S=1/1 2cm 0
MK13 前原 № 046
第 29 図 51 号墓 出土遺物(3)
MK13 前原 № 045
S=1/1 2cm 0
MK13 前原 № 048
MK13 前原 № 049
S=1/2 5cm 0
1
3 4
2
S=1/1 2cm 0
MK13 前原 № 047
MK13 前原 № 043
MK13 前原 № 044
S=1/2 5cm 0
1
3
4
5 2
第20表 51号墓 出土蔵骨器(蓋)観察表
図番号 取 上 番 号
出 土 地 点
形式 計測値
(㎝)
つまみ形 つまみ接合部孔
つまみ台 鍔 かえり
文様 調整痕 釉薬 銘書
死 去 年
洗 骨 年
備考
第27図 4
図版 27-4
― 墓 室
マンガン 釉甕形
― 19.2 13.5 9.7 7.0
饅頭形 無 無 有(2.8㎝)
無
なし
内外面ともにナデ調 整。内面は頂部に向 けて「の」字状の成形 痕。
外面:全体にマン ガン釉だが、つま み下部は露胎 内面:露胎
□□□月□廿十年
□〔月〕十日死□□
〔・・・・・・〕比嘉□□三
― ―
第27図 5 図版 27-5
― 墓 室
マンガン 釉甕形
9.0 26.4 19.4 13.2 9.0
饅頭形 有孔
1段 有(3.5㎝)
無
なし
外面:つまみ台下部に ヘラケズリ痕。胴下部 は横位のナデ調整。
内面:横位のナデ調 整。
外面:庇の縁まで マンガン釉を施す が、つまみ基部は 露胎。
内面:露胎
仲屋良三代ノ/比嘉 宇仕子/□□□名カ マ/□□〔六〕十〔四 才〕
― ―
釉は薄く、
所々素地 が透け る。
第27図 6 図版 27-6
― 墓 室
マンガン 釉甕形
10.7 25.8 20.7 11.2 8.6
饅頭形 有孔(未通)
2段 有(2.6㎝)
無
なし
外面:雑なヘラケズリ。
庇と胴部の境界にナ デによる凹線。
内面:横位のヘラ調整
外面:全体をハケ により施釉。
内面:露胎
光緒丗ニ年/午年六 月/〔明〕治丗九年/
ちょーちか東ぬ仲上 間〔十〕/西〔次左の〕
か〔ま〕/ちょー□東
〔ぬ〕仲/□□
― ― つまみ接 合部は孔 を開けた 後、塞い でいる。
第27図 7 図版 27-7
― 墓 室
マンガン 釉甕形
12.5 31.4 23.6 14.7 10.1
饅頭形 有孔
2段 有(4㎝)
無
なし
外面:つまみ台下部に 明瞭なヘラケズリ痕。
つまみ台2段目の上面 に凹み。
内面:横位のナデ調 整。
外面:全体にマン ガン釉。
内面:露胎
三代ノ次男/亀/昭和 十三年/旧ニ月八日 寅年
― ―
第28図 1 図版 28-1
― 墓 室
御殿形
(陶製)
24.8 48.5 35.4 12.7
―
入母屋を意識し たつくりで大棟 および降棟の先 端にはそれぞれ 瓦当を模した面 を貼付。
型作り成型後、ナデ調 整。
外面:全体を白化 粧後、コバルト・
緑・褐色釉で彩色 後、透明釉。縁は 白化粧のみ。
内面:褐色に彩色 の後、透明釉。
屋良三〔なん宗〕仁比 嘉〔家〕□親冨祖〔ペ-ク-ミ-〕み〔の〕年
〔七〕拾〔四〕才
― ―
※計測値は上から甕形:つまみ台径・口径・内径・器高・体部高 御殿形:棟長・桁長・梁長・器高
第21表 51号墓 出土蔵骨器(身)観察表
図番号 取 上 番 号
出 土 地 点
形式
計測値
(㎝)
窓 枠 / 屋 門
窓数/
形
横帯 文様 調整痕 底面孔 釉薬
窯 印
銘 書
備考
第27図 1 図版 27-1
― 墓口 マンガン
釉甕形 28.4 31.4 17.8 57.0
アー チ 形
3個 方形
凹2 凸1 凹6 凹3 凹3 凹6
叉状工具による沈線 で、肩部に葉文、胴 部屋門の左右に蓮華 文、胴下部の横帯3と 4及び4と5の間に波 状文。屋門は貼付。
外面:ナデ調整。
底部際に明瞭なヘ ラケズリ調整。
内面:横位のヘラ 調整。下部に指 痕。
13個 円形
外面:口縁~底 部際までマンガ ン釉。底面露 胎。
内面:露胎
なし なし 底部に脚 が3個。
第27図 2 図版 27-2
― 墓口 マンガン
釉甕形 27.2 34.4 22.7 51.7
アー チ 形
2個 方形
凹3 凸1 凸3 凹3 凹2 凹2
叉状工具による沈線 で、肩部及び胴部屋 門の左右に蓮華文、
胴下部に二条の波状 文。屋門は貼付。
外面:ナデ調整。
下部はヘラ調整、
底部際はヘラケズ リ、底面はヘラナ デ。
内面:横位のヘラ 調整。下部には明 瞭なナデ・ケズリ 痕。
9個 円形
外面口縁から横 帯6の下までマン ガン釉。内面及 び外底面露胎。
なし なし
第27図 3
図版 27-3
― 墓口 マンガン
釉甕形 19.9 20.4 14.7 31.0
唐 破 風 形
1個 円形
凹2 凹2 凹3 凹3 凹3
叉状工具による沈線 で、肩部に葉文、胴 部に屋門と蓮華文、
胴下部に波状文を施 文。屋門は簡略に表 現。
外面:ナデ調整。
底部際にヘラケズ リ調整。
内面:横位のヘラ 調整。下部に指 痕。
5個 半裁竹管
形
外面:口縁~底 部際までマンガ ン釉。底面露 胎。
内面:露胎
なし なし
第27図 8 図版 27-8
― 墓口 転用
(壺)
12.1 14.9 11.5 21.9
― ― ― なし
外面:叩き目痕 内面:横位のナデ 調整。
―
内外面ともに黒 色釉。口縁上部 と外底面は露 胎。
なし なし薩摩焼
第28図 2 図版 28-2
― 墓口 御殿形
(陶製)
45.9×32.5 41.5×27.2
40.3 36.0×24.0
36.7 アー チ 形
2個 方形
―
正面及び左右に貼付 けによる蓮華文と法 師を配するが、形状 は不明瞭。正面の屋 門も貼付。
型作り成形後、ナ デ調整。
9個 円形
外面に白化粧 後、緑釉及び褐 色釉で彩色し、
透明釉を施釉。
口唇部は白化粧 のみ。内面及び 外底面は褐色 釉。
なし なし
※計測値は上から甕形:口径・胴径・底径・器高 御殿形:口縁外法・底部外法・器高外法・口縁内法・器高内法
第22表 51号墓 出土陶磁器観察一覧表 単位:㎝
( )は復元値
図番号 出土地点 器形 残存部位 口径 器高 底径 施釉 釉色・色調 貫入 文様等 備考
第28 図3
墓室 碗
口縁部か ら底部
13.5 5.5 4.5
コバルトでの型絵染 付後、全体に透明釉 を掛ける。見込には 目痕。畳付は露胎。
全体:白色 文様:鮮や かな色調の コバルト
なし
外面は長方形の点描を全 面に配する中に、松竹梅 文と3ヶ所に鶴を描画。内 面は口縁に長方形の点描 の間に壽福文。見込に松 竹梅文。
スンカンマカイ/砥部 産/大正~昭和/底 部に印なし
第28 図4
墓室 碗
口縁部か ら底部
13.7 5.9 5.2
コバルトでの型絵染 付後、全体に透明釉 を掛ける。畳付は露 胎。
全体:白色 文様:くすん だ色調のコ バルト
なし
外面は点描を全体に描く 中に、松竹梅文と3ヵ所に 花文を配する。内面は口 縁に沿って菊文を、見込に 松竹梅文を配する。
スンカンマカイ/砥部 産/大正~昭和/底 部に印なし
第29 図1
墓室 碗
口縁部か ら底部
13.6 6.0 4.9
コバルトでの型絵染 付後、全体に透明釉 を掛ける。見込には 目痕。畳付は露胎。
全体:青み がかった白 色 文様:くすん だ発色のコ バルト
なし
外面は点描でひし形の窓 を作り、中に花文。1ヵ所で 型が折り重なる。内面は口 縁部に点描で逆三角形を 配する。見込には松竹梅 文。
スンカンマカイ/砥部 産/大正~昭和/底 部に印なし
第29 図2
墓室 碗
口縁部か ら底部
(13.0) 6.0 4.7
コバルトでの型絵染 付後、全体に透明釉 を掛ける。見込には 目痕。畳付は露胎。
全体:白色 文様:鮮や かな発色の コバルト
なし
外面は点描でひし形の窓 を作り、中に花文。1ヵ所空 白有。内面は口縁部に点 描で逆三角形を配する。
見込には松竹梅文。
スンカンマカイ/砥部 産/大正~昭和/底 部に印なし
第29 図3
墓室 碗 ほぼ完形 12.6 6.6 4.4
コバルトでの型絵染 付後、全体に透明釉 を掛ける。見込には 目痕。畳付は露胎。
全体:青み がかった白 色 文様:鮮や かな発色の コバルト
なし
外面は点描でひし形の窓 を作り、中に花文。内面は 口縁部に点描で逆三角形 を配する。所々滲みがみら れる。見込には松竹梅文。
スンカンマカイ/砥部 産/大正~昭和/底 部に印あり
第29 図4
墓室 碗 ほぼ完形 13.0 6.7 5.0
コバルトでの型絵染 付後、全体に透明釉 を掛ける。見込には 目痕。畳付は露胎。
全体:青み がかった白 色 文様:くすん だ発色のコ バルト
なし
外面は点描でひし形の窓 を作り、中に花文。花文は かすれ、ズレ有。内面は口 縁部に点描で逆三角形を 配する。見込には松竹梅 文。
スンカンマカイ/砥部 産/大正~昭和/底 部に印あり
第30 図1
墓室 碗
口縁部か ら底部
13.0 6.25 4.8
コバルトでの型絵染 付後、全体に透明釉 を掛ける。見込には 目痕。畳付は露胎。
全体:青み がかった白 色 文様:鮮や かな発色の コバルト
なし
外面は点描でひし形の窓 を作り、中に花文。ひし形 に大小がみられる。内面 は口縁部に点描で逆三角 形を配する。見込には松 竹梅文。
スンカンマカイ/砥部 産/大正~昭和/底 部に印あり
第30 図2
墓室 碗
口縁部か ら底部
13.7 6.9 6.0
白化粧後、透明釉。
見込は蛇の目状に 釉剥ぎ。畳付は露 胎。
全体:灰色 文様:青色・
褐色
なし
外面に飴釉による丸文を 配し、その外をコバルトに よる丸文を円形に配して囲 む。
沖縄産(壺屋)。
第30 図4
墓室 蓋 概ね残存 3.9※ 4.1 7.2※
上面に黒釉を施釉 後、蛇の目釉剥ぎ。
内面は露胎。
上面:黒褐 色
なし なし
沖縄産。
※口径はつまみ径
※底径は縁部径